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希望の果てにあるものは

第8章 二人


「……じゃ、武器を全てこちらへ渡して」

「はぁ!?」


女の言葉に耳を疑った。
こいつは今、武器を全て渡せと言ったか?


「おい、ふざけるなよ。いくらなんでも……」


銃を向けられているとはいえ、さすがにそれはできない。
武器を失えば化け物に対抗するすべがなくなる。
あの体力に底がない化け物を撒くことなど不可能に近い。
仮に撒くことができたとしても、化け物はいくらでも湧いて出てくる。
ここに来てからなぜかまったく疲労を感じないが、それでも全ての化け物から逃げ切ることなど不可能だ。先にこちらの体力が尽きる。
逃げた先に別の化け物がいた、というのが最悪のパターンか。


「渡せ」


女も武器を失えばどうなるかわかっているはず。
だが、女にとってオレたちは赤の他人。
死のうが行きようが関係ない……いや、むしろ死んでくれた方が都合がいいということだろう。まるで、篠塚と出会った時のオレを見ているようだ。

オレが渡さないと言えば、女はオレを殺して武器を奪うだろう。
こちらに選択権を与えてくれる程度には良心的なやつらしい。
この状況では問答無用で殺されてもおかしくないのだから。
女の目的は情報と武器。武器なら手っ取り早く殺して死体から奪えばいい。
生かしてもらえているのは、単に殺人を犯したくないからか、銃弾をなるべく消費したくないからか、情報を集めさせるために泳がせるつもりだからか。

……なんにせよ、オレがとれる行動は一つしかなかった。


「武器は全てここに置く。オレたちは向こうへ行くから、拾うなりなんなり好きにするといい」


渡せば危険にさらされ、渡さなければ殺される。

大人しく武器を渡す以外に、オレが出来ることなどない。
だがどうしても何か一つは持っておきたくて、ナイフは出さなかった。
向こうからは見えない位置にあるナイフに気づくはずはないのだが……。


「……ま、一個くらいならいいか」


女は、気づいているらしい。


(化け物かあいつ……)


今まで見てきたどの化け物よりも恐ろしいと、オレは本気で思った。

 
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