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希望の果てにあるものは

第8章 二人


「でも、これってなんのパスなんだろう?」

「ここに入っていたということは、このパソコンのパスじゃないかな。だったら覚えた意味皆無だけど……パソコンは全部壊れてて使えないから」

「あはは……」


部屋にはもうめぼしいものはないようだ。
いつまでも留まっていても仕方ないため私たちは部屋を出て歩き出した。
これでまた日記を読む機会を失ったが……まあよしとしよう。
読まなければいけないとは思うが、なんとなく、読みたくないから。

これを読んでしまえば、取り返しのつかないことになる気がして――――。


「……で、それ使えそう?」

「う、うん、なんとか……。ええっと、これを倒して……起こして? これを引いて……で、引き金を引くと……」

「弾が出る、ってね。自信なさげなわりには飲み込みが早いね」

「蒼ちゃんの教えかたが上手いからだよ」

「あー……そう?」


津山さんの見よう見まねなのだが……。
銃の使い方は津山さんの手元を見て覚えただけだ。
津山さん自身がどこでどうやって銃の使い方を覚えたかは知らないが。

最初は色々と疑っていたけど、今はもう大して気にならない。
たぶん津山さんは銃マニアかなにかだろうとしか思っていなかった。
銃が好きで、だから銃に詳しくて。きっと休日には射撃場に通っていたんだろう。だから自然と銃の扱いが上手くなったんだろうな、と。
私の頭の中で『銃マニアの津山さん』という仮定が確定になっていく。
もう、そうとしか考えなれなくなってきた。
また会うことがあったら、どうにかして聞き出してみて――――――


(……でも、無理かなあ)


また会えるなんて確証はない。
二度と会えないかもしれない。
仮に会えたとしても、言葉を交わすことはできないかもしれない。
再会しても何も言わずに私の横を通り過ぎる津山さんが簡単に想像できる。


「……はあ」

「あ、肩痛いの? 休憩しようか?」

「いやいや、それはもうだいぶ回復してるから……」

「……?」


首をかしげる健斗君に苦笑いを返す。
まったく、いつからこんなにネガティブになってしまったんだろうか……。

 
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