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希望の果てにあるものは

第7章 離別


思ったより、あっさりしていた。
化け物を倒せた喜びや、生き物を殺したことへの罪悪感なんてものもない。
ただ、『こんな簡単に死ぬものなんだな』としか思わなかった。
罪悪感については、単にあれを生き物だと思っていないから感じないだけなのかもしれないが。あの化け物はどう見ても生命体には見えない。

煙が出ている銃をポケットに入れることはできず、左手に持ち変える。
部屋に入り利き手である右手で扉を閉めたが、すぐ勝手に開いてしまった。
恐らく強く開け放たれたことにより、蝶番が壊れてしまったのだ。
蝶番が壊れたといえば、私が目覚めた牢屋のことを思い出す。
あのときも、思いっきり蹴っ飛ばしたせいで蝶番が壊れたんだっけ……。

まだあれから数時間しか経っていないのに、もうずいぶん前の出来事のように感じて、思わずクスリと笑ってしまう。
涙はもう止まっていた。


(けどこれじゃ読書は無理だよなぁ)


扉が閉まらない部屋など、廊下にいるのと大して変わらない。
日記を読むのは諦め、一応部屋を物色してみようとしたそのときだった。


「うわあああぁぁあ!!」

「! この声――――健斗君!!」


叫び声を耳にした瞬間、即座に声が聞こえた方向へ走り出す。
遠くの方に化け物に襲われる健斗君の姿が見えた。


「健斗君っ!! このっ……!」


私はとっさに左手に持っていた銃を撃った。

片手で撃ったからか、左手で撃ったからか、もしくはその両方が原因か。
銃から撃ち出された弾丸は化け物から大きく外れ、壁に小さな穴を開けた。
狙撃に気づいた化け物は、健斗君に背を向けこちらへ向かってくる。
健斗君は腰を抜かしたようでその場から動かず、私はというと――――。


「づっ……いった……」


左肩の痛みで動けなくなっていた。

何かで聞いたことがある。
銃には反動があり、撃つときは両手で固定しなければならないと。
さっき化け物を倒したときはしっかり両手で握っていたためあまり反動は感じなかったが、片手で撃つとよくわかる。これは痛い……!
騒ぐほどのものではないが、すぐに動けるほど軽いものではなかった。
だが、化け物はすぐ目の前に迫っている。
撃たなければ、殺される。逃げれば、きっと次は健斗君が狙われる。


(……私が殺らないと)


健斗君を見殺しにはできない――――!

 
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