第7章 離別
――――寂しい。
「健斗君……シロさん……津山、さん……」
誰もいない。呼んでも返事はない。
さっきまでは必ず誰かが返事をしてくれていた。
けど、ひとりで廊下にうずくまる私の声に答えてくれる人なんていない。
涙はまだ止まっていない。泣いていたって、どうにもならないというのに。
仕方のないことなのだ。
私は津山さんのことが好きでも、津山さんは私が嫌いだ。
嫌われているのなら、最後にこうなることくらい、わかっていた。
わかってはいた……けど、覚悟はできていなかった。
いつ別れるか決まっていれば、覚悟できたかもしれないが……。
(……移動しよう。もしものことなんて考えても無意味だ)
こんなところにいたら化け物の格好の餌食となる。
死にたくない。死ぬにしても、あんな化け物に食われるなんて御免だ。
食われるくらいなら自殺する。……まあ、私にそんな度胸はないが。
私にできることといったら、せいぜい弾をなるべく消費しないよう逃げ回ることくらいだろう。弾丸を全て失えば、それでゲームオーバーなのだから。
たしか、津山さんはこの弾倉だと一つで十五回撃てると言っていた。
最初から銃に装填されていた弾倉と渡された四つの弾倉。
銃に装填されていたものに何発分入っているかはわからないが、私に残された銃弾は最低で六十、最高で七十五個というわけだ。
こうして数えてみると、少なく感じる。
あの部屋に着くまで津山さんは五十体近く化け物を倒していた。
津山さんが使った銃弾は五十発。全て一撃で殺している。
だが私じゃ津山さんのようにはいかない。たぶん、一体で三発は使うはず。
残された銃弾を六十個と仮定すると、二十体しか倒せないことになる。
いや、もしかしたら一体につき五発使うことになるかもしれない。
そうなると十二体倒した時点で残弾数は0……。
(……うん)
なるべく逃げよう。