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希望の果てにあるものは

第7章 離別


【津山視点】


「……けど、どうしてもオレにつきまといたいって言うなら――――」


勝手にしたらいい。
オレがそう言う前に、篠塚はオレに別れを告げ、出ていった。
篠塚が立っていた場所には数滴の水が落ちている。

あいつがついてきたって何も変わらない。
ただ少しうるさいだけで、気にしなければどうということはない。
だから別に構わなかったのだ。篠塚がいようといまいと。
けど、その言葉を篠塚に伝えることはできなかった。


「蒼ちゃんっ!」


香月は篠塚の名を叫んで部屋を飛び出した。篠塚を追ったのだろう。
シロは無言で開け放たれた扉から見える廊下を見つめている。


「……追わないのか」

「蒼には、健斗がいる。……透は、一人。だから、僕がいる」

「……はっ、一人になったオレを哀れとでも思ったのか?」


別にあいつらがいても構わないが、逆に言うといなくても構わないのだ。
篠塚が現れるまでオレは一人だった。また、最初に戻っただけだ。


「……一人は、寂しい。一人は、怖い。だから、僕が一緒にいる」

「寂しい? 怖い? オレがそんなくだらないこと思うはずないだろ。いいからおまえもあいつら追え、ここにいても邪魔だ。……今ならまだ間に合う」

「ううん、僕は透と一緒にいる」

「……ああそうかよ、勝手にしろ」


寂しくも怖くもない。

――――ただ、無性に虚しいだけだ。


(むな、しい? ……なぜ?)


なぜオレは虚しいと感じているんだ。
あいつらがいようといまいと何も変わらないのに。
むしろ前は邪魔で、早く化け物に殺られてしまえばいいとすら――――。


……“前”は邪魔?


――――では、“今”は?


「……ああ、そうか」


気づいた。いや、今まで気づかないふりをしていた。
認めたくなくて、受け入れたくなくて、必死に頭から消そうとしていた。

前はただただ邪魔なだけだった。
助けたことを後悔すらした。つきまとわないでほしいと思っていた。
ついさっきまでは、いてもいなくても関係ないと思っていて……。



けど、今は――――篠塚のことが、“心配”だった。

 
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