第7章 離別
あのとき言った言葉が自然と頭に浮かんだ。
『――――せめて化け物を見ても怖がらないようになるまで、津山さんと一緒にいさせてほしいんです』
津山さんと一緒に行動する理由は二つあった。
一つは化け物が怖いから。だが、今はもう化け物に対する恐怖はない。
そしてもう一つは、武器を所持していないから。
武器がなければ殺される。だから今まで津山さんに守ってもらってきた。
でも、私が武器を手に入れたら?
――――もう、津山さんと共にいられる理由がないのでは……?
「あ……」
決めていた。
武器を手に入れた津山さんから離れようと。他でもない、自分自身で。
だから私は津山さんから離れなければならない。
津山さんと一緒にいられる口実を、全て失ったのだから。
いつからだったっけ。
化け物や武器なんて関係なく、津山さんと一緒にいたいと思い始めたのは。
津山さんや健斗君、シロさんと一緒にいるのが楽しいと思い始めたのは。
――――いつからなのかを思い出したところで、すでに手遅れだ。
「……これ、私に?」
「武器が欲しいって言っていただろ」
「は、い」
だらりと垂れ下がった手を持ち上げられ、銃と弾倉を手に握らされる。
渡された弾倉は四つ。銃は一つ。
これからは、自分を自分で守らなければならない。
両手で持てるこれらが、私の命を守るものとなるのだ。
「もうあいつらは怖くないんだろ」
「……はい」
「化け物を怖れなくなり、武器を手に入れたらオレから離れる」
「そう、言いましたよね、私」
言ったのは私だ。
なら、その約束を守らないと。
「……けど、どうしてもオレにつきまといたいって言うなら――――」
「今までありがとうございましたお世話になりました、さようなら」
津山さんが何かを言いかけていたが、私の耳には届かなかった。
一息で言いたいことを言いきって、私は部屋を飛び出す。
……嘘だ。言いたいことはまだまだいっぱいある。だけど。
「……なんで、泣くんだよっ……」
津山さんには、泣いているところなんて、見られたくなかった。