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希望の果てにあるものは

第6章 白い青年


【津山視点】


あのお人好しのバカが連れてきた、髪も服も肌も白い、明らかに異常な男。
こんなやつまで放っておけないというのか、あの能天気なガキは。
あいつは人を疑うということを知らないのか。


「おい、おまえは何者だ」

「……?」


シロと呼ばれていた男に詰め寄って問いかける。
記憶喪失だなんてデタラメに決まっている。
あのバカは騙せても、このオレを騙せるだなんて思うなよ……。


「……よく、わからない。何も、わからない」

「ふざけるな。いいからとっとと吐け」

「……わかった、がんばる」

「おいちょっと待て、なぜそこで指を口に入れる」


男は口に指を突っ込んだまま不思議そうな顔をしている。
恐らく言えという意味の“吐け”を嘔吐しろという意味と勘違いしたのだろう。
ああ、こいつもバカだったのか……なんでオレの周りにはバカしかいないんだ……いや、これもオレを油断させるための演技かもしれない。


「んん……?」

「ちっ……。いいか、絶対におまえの正体を暴いてやるからな……!」


いまだに指をくわえたままの男にそう言い、離れる。
こんな得体の知れない男と行動するのは気が進まないが、篠塚は何がなんでもこいつを連れてくるだろうし……オレが折れるしかないか。
オレが先頭に立つことになるだろうから、こいつの監視はあいつらに任せよう。


(……いや、これは交渉に使えるんじゃないか……?)


こいつは連れていけない。
こいつがいるなら、オレはおまえらと共に行動することはできない。
こいつを置いていくなら今まで通り勝手にしろ。

そう言えば、この男と離れることができ、男の存在を危惧することはない。
上手くいけば篠塚と香月という無駄な荷物を捨てられる。
まさに一石二鳥だ。さっそく篠塚にこの話を……。


(……篠塚は十中八九、この男を見捨てることはない。オレと離れてでもこいつを放っておくことはない……よな、きっと)


あのお人好しが記憶喪失で丸腰のこの男を放っておくことはないだろう。
篠塚も香月も武器などない。化け物に見つかれば確実に殺られる。


(……盾だ。いざというときに、盾にするためだ)


盾にするそのときまで、今はまだ、仕方なく、守ってやろう。

……決して、あいつらが心配なわけじゃない。

 
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