第6章 白い青年
「――――というわけで、こちらがシロさんです」
「おい、何が『というわけ』なんだ」
「いたたたたた!! ぼ、暴力反対!」
津山さんに片手で頭をギリギリと締め付けられる。
いわゆるアイアンクローだ。片手で頭を掴めるなんて、手が大きいんだな。
あとわりと本気で痛いからやめてくれ。
「だ、だってこんなとこに記憶喪失でひとりぼっちなんですよ!? 放っておくわけにはいかないでしょう!」
「そいつが嘘をついているとは考えなかったのか」
「嘘をついてるようには見えないけど……」
「……このお人好しバカが」
お人好しバカってなんですか。
そう尋ねる前に津山さんは私の頭から手を離してシロさんに詰め寄った。
見る角度によってはキスをしているように見えるほど近い。
隣にいる健斗君の顔がわずかに赤くなっているのは気のせいだろうか。
津山さんはシロさんに何かを言っているが、ここからは聞こえない。
何を話しているか気になるが、きっと近づいたら怒られるだろう。
話が終わるまで黙って待っていることにした。