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希望の果てにあるものは

第4章 遭遇


「つ、津山さーん!」


津山さんの名を叫びながら彼が向かった方向へ走る。
すると、前方に床に座り込む人影が見えた。
私はそれを津山さんだと思い込み、まったく警戒せずに近づいた。


「津山さん! たしかに干渉しないとは言ってたけどいきなり走り出すなんてさすがに酷い……って、誰?」

「あ……あの、えっと、僕は……」


かたかたと体を小刻みに震わせる、私と同い年くらいの男の子。
こうしている間にも津山さんは先へ進んでいるのだろう。
だが男の子を放っておくこともできず、私は再度男の子に話しかけた。
怯えさせないように、なるべく優しい声を出す。


「私は、篠塚蒼。大丈夫。私は貴方に何もしないから」

「あ……ううん、その……君のことが怖いんじゃなくて、えっと……」

「……? ……あー……なるほど」


男の子の視線の先には化け物の首なし死体が転がっている。
たしかにこんなものを見れば怯えもするだろう。
私だって最初は怖かったし、死体を見たときは吐きそうになった。

男の子を落ち着かせようと背中をさする。
しばらくそうしていると、男の子は「もう大丈夫」と言った。


「僕は香月健斗(こうづきけんと)。よくわからないけど、誰かに誘拐されたみたいで……気づいたら真っ白な部屋の中にいたんだ」

「……いいなあ」

「え……どうして?」

「ああいや、私はなぜか牢屋の中にいてね……。牢屋の中はホコリまみれだし鉄格子には緑の液体がべっとりついてるしで……あ」


もしかしたらあの液体は化け物の体液だったのかもしれない。
化け物の体にも緑の液体がついていたし、血も赤ではなく緑だった。
そんなものを私は思いっきり触って……あのときのことを思い出すと、なんだか気分が悪くなってきた。液体に触れた手の皮膚を剥がしたくなる。

……思い出さなければよかった。

 
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