第2章 奏で始める
自然が多く、豊かな国ーーークラリネス。
そして、ここはウィスタル城。
侵入者や不審者がいないか警備する門番や見回りなどの兵士。
メイドや騎士、薬剤師、貴族などが忙しく仕事をしていた。
「......今日も平和だなぁ」
「おい、真面目にしろ」
「だって、昨日メイドの子にフラれたんだぜ!?やる気にならないって」
両手で顔をおおい、泣き真似をする同期に呆れて溜め息を吐く。
すると、前方から綺麗なネイビーの髪を揺らして少女が歩いてきた。
「...えっと、こんにちは」
少女はふんわり笑う。
門番の二人は慌てて姿勢を正した。
「こ、これはココナどの!」
「今日はどうされましたか?」
「ゼン殿下へ、御注文の品のお届けです」
腕に抱えていた布に包まれた品物を見せる。
身分証も同様に見せると、門番は軽く頷き閉ざしていた門を開けた。
「はい、ゼン殿下より伺っております。どうぞ」
「ありがとうございます」
会釈をして門を抜ける。
少女の姿が少し遠くなると、フラれたと言っていた兵士が頬を少し紅くさせていた。