第6章 小夜左文字
「みんなー!覚えたかなー?それじゃあ音楽に合わせてやってみよう‼︎」
リスの兄弟の声がする。パレード開始のアナウンスの後、手遊びをレクチャーする声だ。一通りレクチャーが終わるとパレードがやって来る。小夜は振り付け通りに出来るよう、練習を続けていた。審神者はバッグからカメラを取り出し練習する小夜を動画で撮っている。やがてパレードが近づいてくると、そちらにカメラを向けた。
「みんなー!準備はいいかな?一緒に踊ろう‼︎」
黒ネズミの声と共に音楽が変わる。観客もダンサーもキャラクター達も、皆一斉に踊り始めた。小夜も一生懸命ついていく。審神者は小夜の真剣な様子をカメラに収めていた。
「ありがとう!みんなのおかげで素敵なパーティーになったよ!」
再びかけられた黒ネズミの声でパレードは動き出す。小夜は手を振りながら、黒ネズミの名を呼んでみた。するとその声が聞こえたのか、背中を向けていた黒ネズミが振り向いて手を振った。
「よかったね、小夜」
「うん、こっち向いてくれた」
黒ネズミの姿が見えなくなるまで小夜は手を振り続けた。
黒ネズミの顔のシルエットの形をした中華まんを頬張りながら、審神者と小夜は地図を広げていた。時間がぽっかりと空いてしまったのである。手近なところにあるアトラクションの待ち時間を端末で確認して、審神者はいくつかを順に指差す。
「今のところこれとこれが15分待ちで、こっちのとこのショーは今始まったばかりだから除外して、もうじきクローズするからこれも除外かな」
地図に示されたアトラクションを見て、小夜は小首を傾げた。
「それじゃあこれかこれだね。この二つはどう違うの?」
「蒸気機関車に乗ってのんびり景色を眺めるか、船に乗って探検するかの違いだよ。小夜はどっちがいい?」
「……蒸気機関車……。探検は危ないから」
「ふふっ、わかった。じゃあ蒸気機関車に乗りに行こうか」
中華まんのかけらを口の中へ放り込むと、二人は手を繋いでアトラクションへと向かった。