第1章 夢の国へ
「だったらいち兄、まず俺っちが大将と一緒に行って本当に安全かどうか確かめてくるぜ」
一方的に(主に一期側が)平行線を辿る話し合いに業を煮やしたのか、薬研が間に割って入った。
「俺っちなら練度も高いし上手く工夫すれば本体を持って中に入れる。何かあっても大将一人守りきるぐらいはできるだろうさ」
この本丸の初鍛刀である薬研は初期刀の歌仙に次いで二番目の練度の高さを誇る。内番の手合わせでも、一期の練度では到底歯が立たない程の差があった。名実共に審神者の懐刀である弟の提案に、一期は不承不承頷いた。
「薬研がそこまで言うのなら仕方ないですな。ただし、少しでも危険があった場合すぐに帰ってきてもらいます。」
これだけは約束していただきます、と言って譲らない一期に審神者はこっそり肩をすくめた。
一方薬研は兄弟に囲まれズルいだの自分も早く行きたいだのと騒がれていた。その内に粟田口以外の短刀達も寄ってきて土産をねだったりしている。その騒ぎを横目に近侍の長谷部が審神者に尋ねた。
「主、ご出立はいつになりますか?」
「そうね、今から申請を出せば次の休日には行けるでしょう」
「ではそのように手配しておきます」
頼むわね、と長谷部に命じて審神者は歌仙の方を見た。
「歌仙、手間をかけて悪いけど誰がどの順番で行くか決めておいてもらえる?決まったら教えてちょうだい、計画を立てるから」
「ああ、わかったよ。決め方はどうするんだい?公平にくじででも決めようか」
「それがいいわね。じゃあ行きたかったら歌仙に各自申告して。くじは一期と薬研に作ってもらいましょう。先に言っておくけど二人ともズルはダメよ?歌仙、後はお願いね」
審神者の声が途切れると、歌仙の周りに刀剣達が集まった。薬研と一期以外、全員だったことは言うまでもない。