第4章 今剣
早めの夕食をとりに向かったレストランで、キャラクターシェイブのハンバーガーを食べながらインフォメーションを開く。夜のパレードは2時間後だ。日中は暖かくても日が暮れると一気に冷え込むから何か防寒になるものを買った方がいいだろう。待ち時間に何か一つくらいはアトラクションに乗れるかもしれないが、それではパレード待ちの場所取り合戦に負けてしまう。ここで少しゆっくりして、その後パレードの場所取りに向かった方が良い。審神者はこれからの予定をシミュレートして、インフォメーションをしまう。今剣はハンバーガーに苦戦しつつも気に入った様子で舌鼓をうっている。ポテトを口に運びながら、審神者は今剣へ声をかけた。
「つーくん、夜は寒くなるから羽織れるものを買ってからパレード待ちの場所取りしよっか」
「わかりました。ぱれーどはどこでみるのですか?」
「朝乗った飛行機の下あたりで見ようか。あそこは通路が広いから多少後ろでも良く見えるし」
「ぼく、すごくたのしみです。あれからなんかいもどうがをみたけど、ほんものはもっときれいだってやげんがいってましたから」
「フフッ、本物見たらびっくりするわよ?本当に綺麗だから」
期待に胸を躍らせる今剣に、審神者は優しく微笑みかけた。
2時間後、今剣は何万もの光が押し寄せるパレードを我を忘れて見つめていた。初めて見るそれは、あたたかく、優しく、時にその姿を刻々と変えて目の前を通り過ぎる。知らず弧を描く口元から、小さく溜息が漏れた。手を振るキャラクター達に応えるように手を振り返す。全てのフロートが通り過ぎるまでパレードに釘付けの今剣に、審神者はそっとフード付きのブランケットを羽織らせた。
パレードが終わると、本丸へと帰投する時間が近づいてくる。帰り仕度をする審神者に、今剣は恐る恐る声をかけた。
「あねうえさま、もうかえるのですか?」
「うん、少し早いけどそろそろ帰ろうか。一期が怖いし」
後髪を引かれている今剣に、審神者はなるべく明るい声で問う。
「じゃあつーくん、風船買いに行こう?」
「‼︎はい‼︎」
手を繋ぎ歩く2人の足取りは軽かった。