第4章 今剣
「つーくん、熱いからふーふーして食べなさいね」
「はーい、あねうえさまもですよ」
洞穴の中にある店の奥で、出来立てのオムライスに舌鼓をうちながらたわいもない会話を交わしている。昼時であり店内は混んでいたが、運良く空席があり座ることができた。床に届かない脚をぶらぶらさせながら、今剣は付け合わせの野菜をつついている。器用にニンジンだけを残しているのを見咎めて、審神者は小さく声をかけた。
「つーくん、ニンジンもちゃんと食べないと強くなれないよ」
「うー、にんじんはにがてですぅ」
「残さず食べたら次は大きなお船に乗せてあげるよ?」
「おおきなおふねですか?」
「そう、蒸気船っていってね、お湯を沸かした時にでる湯気で動いている船なんだよ」
「ゆげでふねがうごくのですか⁈」
「そう、うんと熱いお湯を沢山沸かして動かすの。乗ってみたくない?」
「のりたいです!……でも、にんじん……」
「ほら、頑張って食べよう?残ってるクリームソースに絡めて食べれば気にならないよ」
「うぅー、わかりました、がんばってたべます」
「偉い偉い。さすがつーくんだね」
オムライスにかかっていたクリームソースに残ったニンジンを絡め、一口で放り込む。ほとんど咀嚼もせずに飲み込んで、今剣はどうだという顔を審神者に向けた。
「すごいすごい、ちゃんと食べられたね」
「うぅー、がんばりました……」
オレンジジュースを飲み、口の中のニンジンの味を流し込むようにしてやり過ごすと、今剣はほっと一息ついた。
「じゃあ約束通り次はお船に乗りに行こうか」
「はい!いきましょう!」
食べ終えた食器を片付けて、二人は足取り軽く店を出た。