第4章 今剣
まずはと、アーケードを抜けてまっすぐ進み、中央にそびえ立つ城の中を横切る。城を抜けると目の前には煌びやかなメリーゴーランド。その隣には耳の大きなゾウに乗って宙をくるくると回るアトラクションがあった。
「あねうえさま、ぼく、あれにのりたいです」
「つーくん高いトコ平気なの?」
「ぼくはたかいところ大好きです」
ゾウに乗るアトラクションを指差す今剣を、審神者は意外だと思いながら覗き込む。今剣の目はキラキラと輝いていた。それを微笑ましく見遣り、審神者はある提案をする。
「じゃあもっと高いトコを回るアトラクションがあるからそっちにしようか。あ、その前に予約券取らせてね?」
「よやくけん、ですか?」
「そう。とっても楽しいオバケ屋敷への招待券よ」
「おばけやしき」
今剣はオバケ屋敷に興味を持ったらしく、更に目を輝かせている。この施設のオバケ屋敷は、ハロウィンからクリスマスにかけて普段とは違う特別な演出がなされるのである。審神者はそれをとても楽しみにしていて、まず初めに訪れるつもりでいた。今剣のリアクションも良いのでもし待ち時間が短ければそのまま行こうと、予定を変更する。待ち時間を示す時計は13分を指していた。それはこのアトラクションにおいては待ち時間無しを意味するものである。審神者は予約券の配布場所ではなくアトラクションの入口に向かう。
「あねうえさま?けんはとらないのですか?」
「今待ち時間無しで入れるから先に入っちゃおう」
審神者は今剣の手を引いて進もうとするが、何故か今剣は一点を見つめて動かない。不審に思い審神者は尋ねてみた。
「どうしたの、つーくん?このオバケ屋敷は怖くないよ?」
「……あねうえさま、ここはきけんです。いま、あのたてもののまどにヒトダマがみえました」
オバケ屋敷は古びた洋館の様を見せている。その二階の窓を指差しながら、今剣は険しい視線を向けていた。審神者は驚き、すぐに差された窓を見遣る。そこにはもう何も無かった。
「あらら、残念。私も見たかったなぁ……」
「あねうえさま?こわくないのですか?」
「うん、本物の人魂じゃないからね。ここは時々窓に人魂が映ることがあるの。凝ってるでしょ?」
実は演出の一つだと明かされて、今剣は安心して歩を進めた。