第3章 御手杵
「なぁ、ある……じゃなかったみなみありゃなんだ?」
入口を入ってすぐにある地球のオブジェに長い列ができている。その先頭を伺うと、なにやら奇妙な飾りがあった。オレンジ色のカボチャに顔らしきモノが付いた置物を、やけに白い人々が抱えたり捧げ持っていたりするのだ。その周りには沢山のお菓子が飾られている。
「んー?ああ、ハロウィンのデコレーションだよ。期間限定の飾りだからみんな写真撮ってるの」
「はろうぃんってなんだ?」
「西洋のお盆。死者の魂が家族の元へと帰る日って云われがあるの。死者の魂が迷わないようにカボチャで提灯を作って玄関先に飾っておく習わしがあってね、子供達は仮装してお菓子をもらいに家々を訪ねて回るのよ」
「要は祭みたいなものか?」
「うん、まあそんなトコ」
ざっくりとした解説をしながら、壁のようにそびえ立つ建物の下をくぐり抜ける。通路の左右には土産物屋が並んでいるようだ。陽気な音楽が聞こえてくる。完全にくぐり抜けると、目の前に煙を上げる火山が見えた。
「なんだか薬研が言ってたのと雰囲気違わねえか?」
「うん、そうだよ。薬研と来たところとは別のところだから。ここは二つの趣きの違う施設が隣同士に併設されているの」
「へぇ、何が違うんだ?」
「こっちは海に関係したものが集められているの。それにこっちは大人向けに作られているからお酒を出す店もあるのよ」
「おいおい、真昼間から飲んでていいのか?」
「とか言って御手杵だって嬉しそうじゃない」
「んー?まーな」
「飲んでもいいけど程々にね。ベロベロになったら置いて帰るから」
「おいおい、ひでーな」
そんな軽口を叩きながら、大きな船が見える方へと歩いて行く。途中の路地を曲がると、とある建物の前に行列が出来ていた。審神者は迷わずそちらへと進むと、列の整理をしていた係員に尋ねた。
「あの、まだ大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
良かった、と呟きそのまま最後尾へと並ぶ。御手杵は不思議そうに審神者の後をついていく。二人が並んでしばらくして、後ろにロープが張られた。