第1章 夢の国へ
「主、これは何ですか?」
作成中の資料の上に置かれた薄い箱を見て、近侍の長谷部が声をあげる。箱には西洋の城と煙を上げる火山の写真が印刷されていた。この本丸の主である審神者はちらりとそちらへ目を向けると、作業の手を休めずに答えた。
「ああ、それね。現世にある娯楽施設の催し物の動画が収録されているの。夕食の後にでも見ようと思って」
短刀達が喜びそうだから一緒に見るつもりだと審神者は告げて、長谷部の方を向いて口を開く。
「長谷部も見る?あ、何なら全員で見ようか」
「ならば皆に伝えておきます。主が一緒に見たいものがあると」
頼むわね、と呟いて審神者はまた作業を再開した。
夕食時、大広間に集まってきた刀剣男士達がそれぞれの席につく。
あらかた集まった頃合いを見計らったように審神者と燭台切が寸胴鍋を、歌仙がお櫃を持って現れた。
「はーい、みんな今日はカレーだからね。いつも通り食べる量は自己申告で‼︎ビーフカレーとシーフードカレーと2種類あるから好きな方を選んでね」
審神者の声を皮切りに各々が皿を持ち順番を待つ。歌仙はご飯を、審神者と燭台切はカレーを、それぞれ好みの量だけ盛り付ける。最後に自分達の分を盛り付けると、3人とも着席した。
「長谷部から聞いているとは思うけど、この後みんなで見たいものがあるからよろしくね。それじゃ、いただきます」
いただきます、という唱和が続き夕食が始まる。ワイワイと話しながら食事をしていると、今剣が審神者に話しかけた。
「あるじさま、きょうはみなでなにをみるのですか?」
「それは見てからのお楽しみ。すごく綺麗で楽しいから今剣もきっと気にいるよ」
それを聞いた短刀達がそわそわし始めた。中には急いで食事を終わらせようとする者もいて、一期一振から注意を受けている。審神者が微笑ましく見やると、他にも急いで食事を終わらせようとしている者が少なからずいて、歌仙は呆れながら言った。
「主、後片付けは僕らがするから早くみんなに見せてやってくれないか」
「悪いけどお願いね」
苦笑しながら審神者が頼むと、同じように苦笑した燭台切が頷いた。