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夢と魔法と冒険と

第9章 へし切長谷部


……気まずい。

モノレールに並んで座りながら、審神者は正直焦っていた。あさから必要最低限の会話しかしていない。長谷部は先程からガイドブックを熟読しているからいいものの、今から冒険の海へ行こうとしている男女二人連れにしては恐ろしく会話が無いのを審神者は気にしていた。何か楽しげな話題はないかと頭を巡らせてみるものの、気の利いた話題が出てくる訳でもなく、気づけば入場口に並んでいた。ちなみにチケットは長谷部が用意していたので買う必要は無い。出来る男、長谷部である。

それはさておき、何故これ程までに審神者が気まずい思いをしているのかというと、話は前回の現世行きまで遡る。乱と共に夢の国へと行った際にナンパされそれを乱が追い払ったのだが、その時乱の口から衝撃の事実を聞かされたのである。三日月、鶴丸、一期、燭台切、長谷部。この五名があろうことか自分のことを狙っている。審神者にとっては寝耳に水であったが、あながち思い当たる節が無い訳ではない。そして思い当たってしまうと妙に意識してしまい、つい態度がぎこちなくなるのだ。いきなり態度が変わるのも不自然なのでそれとなく五名から距離をとってはいたが、今回運悪く現世行きを勝ち取っていたのが長谷部だったのである。いつも通りにしているつもりでも、つい意識してぎこちなさ出てしまう。そしてそれに気づかないフリをしてくれているのにも気づいているので尚更気まずい。自意識過剰が招いた自業自得なのは重々承知の上で、審神者は一度、深く溜息をついた。
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