第8章 赤いキミと【※】
その焼却炉は清掃の時間以外使われることはなく特別室棟の裏ということもあって放課後はほとんど人影がなかった。
『…体育館行かなくていいの?』
この焼却炉は体育館からも離れていて部活に顔を出すというのにはまったく関係のない場所だ。
征十郎は引いていた手を離すとこちらを振り向く。その顔はひどく冷めていた。
『…せいじゅろ……?』
「さっき僕があぁ言わなかったら梓はあいつと一緒に帰っていたかい?」
その声は表情と同じく冷めたものだった。それが怖くワタシは少し後ずさりをする。
その間合いを開けぬようワタシが下がった分だけ征十郎はこちらに歩み寄る。
「あいつと二人で帰りたかったかい?」
征十郎の歩み寄るスピードが早くなる。
『せ…征十郎、部活。ほら部活顔出さなきゃ…』
ワタシはまた一歩後ろへとさがる。
「あぁ、あれは嘘だよ。あぁ言わないとキミあいつと帰っていただろう?」
征十郎との距離が近くなる。ワタシはもう一度後ろへと下がろうとした、が自分の背後は校舎の壁がありこれ以上後ろへと下がることは出来ない。
「あいつと帰りたかった?」
ワタシはうつむきふるふると首を横にふる。
「じゃぁなんでさっきいいよって言いかけたの?」
征十郎との距離はほぼゼロになり軽くうつむいている顔をあげると目の前に征十郎の顔があった。
その顔がさらにワタシに近づき唇が重なった。
その唇をスッと離すと
「こういうことされてたかもしれないよ?……されたかったの?」
『ち…違う。そんなこと思ってない。』
「ふーん。…僕、前に言ったよね。笑顔を向けるのが気にくわないって…。それなのにキミは事あるごとに僕たちの話に混ざってきて、最近じゃ仲良さそうに話しちゃって…。そんなに僕のこと不快にさせたかった?……もしかして僕のこと不快にさせて、、“シテ”欲しかったの?、、、」
征十郎が左側に手をつきその反対側のワタシの耳元で
「“オ シ オ キ”」
と。