第9章 Battle9 VRMMOだからこそ、伝わる温度差
でもなぁ、戦ってる時に感じる、あのゾクゾクとする快感。
あれは、確実にみっちゃんへの恨みだけじゃない。
あの快感は、刀剣としての本能だったのかもね。
斬り殺した時の感触も、僕が刀剣だった時代のものだ。
まぁ、どちらにせよ、僕は僕。
僕は、不敗の王セレナであり、柊 恵。
姫鶴一文字っていう過去も思い出せないしね。
でも、思い出せたとしても、僕の決断は変わらないよ。
だって、僕は今の生活が好きだ。
僕の一番の目標は、審神者としての活動ではなく、打倒エル。
宿敵の相手だって、みっちゃんじゃない。
赤月エル、あいつ以外に考えられないね。
「それで、姫。お前は、今後どうしたい?」
「そりゃあ、決まってるさ」
何故か、みっちゃんの顔色が悪い。
それ以上に、倶利伽羅の顔が怖い。
なんだかなぁ、この二人。
変に思い込みが激しくてヤダヤダ。
「相棒……、赤月エルを倒す。そして、不敗の王を取り戻す」
できれば、エルともやり直したい。
でも、エルが心の底から反省することを望むよ。
彼が、ギルドの皆と平等に仲良くする決心をするまで、僕は何度でも壁になってやる。
そして……、チルちゃんも一緒にギルドをやり直したい。
そうすれば、僕の楽しかった思い出も、また戻ってくる。
「――はぁ、それじゃあ、お前は姫鶴一文字に戻らないんだな?」
「長谷部、なんで?」
「何故って、お前な……。お前は、元々姫鶴一文字だろう?」
「悪いけど、もう記憶はないから。姫鶴一文字は死んだ。今、ここに居るのは不敗の王、セレナーデだよ」