第22章 俺の
ー澤村ー
しばらく無言のまま歩いて、突然立ち止まったかと思えば肺の中の空気をすべて吐き出すような溜息を吐いてしゃがみこんだ朱莉。
「どうした?」
「やっ、ちゃったー…」
顔を腕で隠しながら丸まる姿はさっきの威勢の良さとはだいぶかけ離れていて面白くもあった。
「だいち、ごめんね…」
「なんで謝るんだよ」
「あんなとこ見せたくなかったのについカッとなっちゃった…。」
落ち込む朱莉をよそに俺は嬉しい気持ちでいっぱいだった。
だっていつも俺が周りに『俺のだ』って言ってばかりで、朱莉は平然としていて。
そんな彼女が『あたしの』と言ってくれた。
それだけで充分幸せな気分なのに。
「かっこよかったぞー?ありがとな。」
ヨシヨシと頭を撫でれば少しだけ上げられる顔。
「ほら、帰んべ。」
「ん。」
手を差し出すとそっと握り返されて、二人の体温が共有される。
帰ってあいつらに俺の彼女は格好いいんだって自慢してやるんだ。