第19章 二人の始まり
この人は何を言ってるのだろう
付き合えないって言ってるのに、それでも付き合おうと言って来る。
なぜ?どうして?
「付き合えないって言ってるでしょ」
力の篭らない腕でだいちの胸をグッと押したけど、少し隙間が開くだけで離してもらえそうに無かった。
「それは付き合えない“理由”があるだけで、朱莉は付き合うのが嫌な訳じゃないんだろ?」
痛いところを突かれた。
言われた通り色んな理由があるけど、付き合いたくないんじゃない。
本当はずっと一緒にいたい。
でもだいちを不幸にしたくない。
その二つを天秤にかけたとき、
勝つのはいつも『だいちの幸せ』
あたしの幸せなんかよりだいちが幸せならそれでいい。
だってあたしはだいちに出会えたこと自体が既に奇跡で、それ以上なんて望んじゃいけなくて
だいちにはもっと相応しい人が居るはずだから
あたしがこの気持ちを抑えれば良いだけだから
「なぁ、」
そんなあたしの決意は
「俺の幸せを思うなら、俺と付き合ってくれ。」
崩れ落ちる。