第1章 互
「……いや、すまなかった。お前がそのような浅はかな女で無い事はよく知っている。大方、正当な理由で刀を持ちながら、今の世でも弱者を護りたかったのでだろう? お前は幼い頃から正義感が強くて優しい奴だったからな」
「……ホント、女心の分からないバカね」
「何?」
「どうして貴方はこんなにも鈍いの?」
「……どういう事だ、はっきり言え。お前は昔から言葉が足りない」
「小太郎だって昔から早とちりで勘違いばっかりしてるじゃない、お互い様よ。弱者を守りたいだなんて……そんな奇麗な理由で真選組に入ったんじゃないわ」
どうやら気の強さは昔と変わらぬようだ。言葉足らずで桂を困らせるのも幼き時代と変わらない。互いに抜刀のため、刀に添える手は無情にもしっかりしているが、二人はこの掛け合いを少なからず楽しんでいた。けれど、懐かしい時間は終わりを迎える。桂は再び、納得できるような答えを美穂から求めた。
「ならば今一度聞く。何故、真選組に入ろうと思った?」
「桂小太郎に会うため」
返事は短かった。しかも即答。
嘲笑混じりの笑みを浮かべながら言う彼女は、どこか寂しそうな双眸で桂を捉えた。