第34章 林檎ちゃん
「あの…」
モジモジしていて続きを話そうとしない。
鬱陶しい、早く喋りなよ。
こっちは早く寝たいんだから。
「大野くんのお宅…美術館を経営なさってるんですよね?
今度…お邪魔してもよろしいですか?」
俺の家、ね。
こいつもそれが目的ね。
「…好きにすれば」
感情を込めることなく返す。
「ありがとうございますっ」
「…」
「それでですね?」
まだなんかあんの?
「一緒に…行きません?」
「は?」
「ダメ、ですの?」
「あんた何言ってんの?
考えれば分かるでしょ。
図々し過ぎ」
立ち上がり、彼女を睨みつける。
「え?その…」
よっぽど断られない自信があったのか、戸惑っている。
「もう俺に近寄んないでくれる?迷惑だから」
そう残して教室を出る。
「大野サマって怖ぇ…」
「あぁ、ただ話しかけただけなのにな」
「でも、声が素敵ですわ!」
様々な声が飛び交う。