第3章 受験
「終了!各自、ペンを置いてそのまま待ってろ。俺が取りに行く」
日向先生が腕時計を見て言うと順番にテスト用紙を回収しに向かった
そして最後のテスト用紙を回収すると教卓の前まで戻り、名前の欄にちゃんと書き忘れがないか確認作業に入ったため、教室内がざわつき始める
それに便乗するかのように私は隣人に話しかけた
「…ねぇ、一ノ瀬くん」
「……なんですか?」
なんだ今の間は…、とちょっとむっとしながらも話を続ける
「私のこと、知ってる?…よね?」
付け足しつつ目を見て言うと、トキヤ…一ノ瀬くんは再び間をあけると小さな声でええ、と頷く
「確か、公園のベンチのところで…私のことを見てニヤけてましたよね」
「!!あ、あれは…っ!」
本当の理由なんか言えなくて思わず口ごもる
「……何さ、あの頃の一ノ瀬くんは表情豊かで可愛かったのになぁ…」
口を尖らせながら言うと一ノ瀬くんはカッと顔を赤くした
私はそれに驚きえ、と一ノ瀬くんを見つめた。だって、普通そこは怒られるだろうと思ってたからだ
真っ赤な一ノ瀬くんと驚いてポカンとしてる私が見つめ合っているという異様な光景の中、日向先生の声が教室に響いた
「よし、これで筆記試験は終了だ。次は面接だな。遅刻すんなよー」
と、テスト用紙の束を抱えて教室から出て行った。それと同時に隣から勢いよく立ち上がる音が聞こえ吃驚して振り向くと、ちょうどカバンに荷物を入れたところなのかカバンを持って一ノ瀬くんはさっさと教室から出て行った
…耳が赤かったような気がしたけど、気のせい…かな?
とりあえず、私も教室から出るか