pieces.~海の悪魔の化身~(ONEPIECE)
第10章 クライガナ島、再び
「この舟はクライガナ島に…?」
「あぁ、そうだ」
目的地を聞いたの脳裏に無理をしてまで自分を送ってくれた友の顔が浮かぶ。
(ベローナ…どうしているかな……)
ぼんやりと考えているとバサリと頭から毛布を被せられる。
「何を…!?」
「眠れ」
「は……?」
「顔が酷い」
「いきなり…何ですか」
確かにずっと気を張り続けていた上に相次ぐ怪我。
やっと解放された今、の疲れはピークに達していた。
だからと言っていきなり寝ろと言われて寝れるほど無神経ではない。
「島に着いたら休んでいる暇などない、お前には教える事が多そうなのでな」
「た、鷹の目が…私に稽古をつけるのですか?」
「不服か?」
「いえ……」
驚いた。
この人が他人に稽古をつけるなど有り得ないと勝手に思っていた。
もっと冷酷で人には関心がない人だと思ってのに。
「ミホークと呼べ」
「………」
驚く事ばかりだ。
頭にミホークのハットを被せられる。
視界が遮られると不思議と睡魔がやってきた。
「ミホーク、貴方は……」
「眠れ」
貴方は何故私を連れて行くのですか。
その言葉は最後まで紡がれる事のないまま、は静かに意識を手放した。
「海の悪魔に負けぬ力をつけねば、お前はいつか死ぬぞ…」
あの時、黄猿やセンゴクを嘲笑うように片手一つであしらっていたは間違いなく海の悪魔に取り込まれていた。
そしてその時の事を本人は記憶していない。
この先何度も同じ様な事があれば何れと言う意識は完全に取り込まれるだろう。
ミホークはそんな予測を立てていた。
小さく寝息を立て始めたを見てミホークは目を細める。
「お前が力をつけた時こそ、本当の出発点だろう」
年の離れた彼女にミホークが抱いた小さな感情の正体はまだミホーク本人にさえわからずにいた。