第6章 Falsify
「ハッ、何ふざけたことを言っている?」
「ふざけてなんかねぇ。」
サボは動かない。
「だとしても、私はお前を好きにはならない。それはお前が一番よく分かっているんじゃないか?」
「そうだな・・・。」
サボはシルクハットを取った。
サボの目の傷がよく見える。
「俺はお前に傷をつけた。」
「だから何だ?」
私に何を言いたい?
「俺が残した傷だ。その背中の傷は。」
「だから何なんだ!?何が言いたい!!?」
あやふやに言われても意味が分からない。
「お前は俺のものだという証拠だ。」
「はぁ?」
「お前はこれからその傷を見るたびに嫌でも俺を思い出す。決してその傷は消えることはない。」
傷で・・・。
こいつを・・・。
嫌でも・・・?
「はぁ!?ふざけんな!テメェ、いい加減にしろよ!!」
短刀でサボの腕を切った。
「っっ!」
サボは顔をしかめた。
「私は誰も愛さない。私が心を赦すことはこれからもない。」
決して・・・。
「ってぇな。」
サボの袖は血に染まっていく。
「俺はお前を変える。素直な女に変えてやる!」
「私はもう昔のように素直になれない!!」
エスメラルダは腕を思いっきり振るった。
だがそのせいで肩に痛みが走る。
「ッ痛!」
肩を押さえサボに言う。
「私はお前が死んだ弟のように愚かにしか見えない。」
弟?
こいつ兄弟がいたのか?
「お前弟がいたのか?」
「もうこの世にはいないがな。私から逃げ出した影に殺された。影に敵う訳もなく無様に散った弟だった。」
ラファティの血筋はじゃあ・・・
「ラファティの生き残りはお前だけってことか・・・?」
「・・・あぁ。そうだ。」
ポツリと言うエスメラルダ。
「だから私は愛されない。愛することもしてはいけないんだ。」
「何故だ。」
「家族を殺して自分が生きていることが罪だからさ。」
罪。
俺はエースを助けに行かなかった罪がある・・・。
「愛する罪には愛されない罰。(安室奈美恵のSHOULD I LOVE HIM?より歌詞引用)」
「愛する罪・・・。」
俺はエースのことを思う資格なんてないのかもしれない。
「もしも、私が誰かを愛することが赦されるならそれは影に勝った時だ。」
俺は待ってもいいってことか?
お前が俺を受け入れる日が来ることを・・・