第10章 運命なんて信じたくないよ
「坂田さん、忘れ物はありませんか?大丈夫ですか?」
「お前さっきから何回それ聞いてんだよ!母ちゃんですかコノヤロー!」
「違いますよ!坂田さんがいっつもだらしないからに決まってるじゃないですか」
「おまっ、知らねェだけだろ!銀さんは本当はやる男なんだからね!やるときはやるんだからね!昨日の夜だってぐごばっ」
「朝から何言うんですか!!!」
勢いに任せて坂田さんの横っ面を張りとばす。いてーいてーと大袈裟に戯けながら、彼は私の顔を覗き込んでこう言った。
「お前さ、もうそろそろ止めねえ?それ」
「それって何ですか?」
「”坂田さん”ってやつ。昨日は”ぎんときぃ〜”ってノリノリでぐぼあっ」
「口ききませんよ!!」
私の家を出て、彼は隣の万事屋へ、私はいつもの通りお城へ向かう予定だった。そろそろ行かないと、と思い彼に伝えようとすれば____通りの方から大きな声が聞こえてきた。
「美和さんっ!!」
「え、新八くん……?」
「おーぱっつぁん。相変わらずうるせーな朝から」
「……、はぁっ、…!!逃げて下さい!!」
「………な…」
「誰かがっ、美和さんを狙ってるんですよ!!のんびりしてたら、本当に____殺されるかもしれません!!」
*
「_____楽しみだなあ。あいつに会うのは____何年ぶりかなァ」
にや、と。
男は、曇天の空を見上げて、僅かに口角をあげた。
それは確かに、これから起こる事の顛末を、暗示しているような気さえした。