第2章 坂田銀時という人
「ありがとう新八君。でもごめんね、いきなり押しかけて」
「いいですよ全然!逆に作りすぎちゃって困ってたんです。それに……すみません銀さんがご迷惑かけたみたいで…」
「あれは…ハハ……」
そもそも事の発端は、私が坂田さんの家に着物を置いてきてしまった事だった。
万事屋に住み込みで働いているらしい神楽ちゃんという女の子が私の着物を発見し、話を聞いた新八君とふたりで有らぬ勘違いをして坂田さんを問い詰めたらしい。
そして坂田さんが私に吐瀉物をかけたことを知り、菓子折りと私の着物を持って謝りに来てくれたというわけだ。
そして私はというと、先日町でスリにあったためにお金をなくし、飢えている真っ最中だった。
「す、すみません。紗倉さんのお宅で……って!だ、大丈夫ですか!?」
「あ、はは……大丈夫で…」
ぐううう。
そのとき、もう死に絶えたと思っていた私の腹の虫が盛大に鳴き始めたのだ。
そして万事屋に急にお呼ばれした次第である。
あり合わせですみません、と出された煮物と味噌汁は文句なしに美味しかった。新八君は立派な主夫になると思う。
「私神楽ネ!よろしくアル美和!」
「よろしくね神楽ちゃん。神楽ちゃんって綺麗な肌してるね、羨ましいなあ」
「あ、あたりまえネ!私は歌舞伎町の女王アル!」
元気に挨拶してきてくれた色白の子が神楽ちゃんらしい。思ったことを正直に言えば、胸を張って照れ隠しをする姿が可愛らしい。
「おまえ無職だったの?」
「……就職難なんですよ最近は」
デリカシーもへったくれもない坂田さんからふいっと顔を背けると、坂田さんが椅子から立ち上がり私の側で立ち止まる。そしてお皿の近くにトンと手を置き、私を上から見下ろす。
「いい仕事があんだけどよォ、紹介してやろうか?」
にやにやと笑う坂田さんを怪しいと思いつつも、結局は口車に乗せられてしまうのだ。