第5章 過去も未来もすべて
「本当にこいつ上玉だな!見ろよ、震えてるぜ」
「か〜〜っ、そそるねぇ!ちょっと遊んでやっても怒られりゃしないだろ」
私を捕まえたのはさっきの二人組だったらしい。ここでびびったら相手を調子に乗らせるだけだ、と男の顔を睨み返す。
「なんで私がお前らみたいなクズに対して震えなきゃいけないんですか」
「お前……!今の立場分かってんのか!!」
「るっさいクズ!手離しなさいよ!!」
「このっ!」
パン、と乾いた音がして頰に熱が走る。やばい、口切れたかも。端から流れる血の感触を感じながら、私は尚も男たちを睨みつけていた。ここまで来るともう意地だ。
「まあまあ、ここは立場を分からせてやろうぜ」
殴ってきた男を押しのけ、もう一人が私に馬乗りになった。そいつの手にはナイフが握られていた。
それで顔でも斬りつけられるのかと思ったら、ナイフを見せびらかしながら首元に持って行き、着物を切り裂いた。
きっと今私はあられもない姿になっているだろう。何でこんな奴に、という悔しさで頭がおかしくなりそうだ。
「ほら、少し俺たちも楽しませてもらうとしようぜ」
やだ。いやだ。
「触るなっつってんだろ!!!」
「うわ、暴れんな!このっ、」
また顔を殴られたが、そんなこと気にしてられなかった。
「やめろ!離せよ!!誰か、誰か助け_____!!!」
我を忘れて、無我夢中で叫んでいた。だからだろうか、近づいてくる足音に気付かなかったのは。
「_____がっ!!」
「んだお前……ぐあ!」
「……っ、美和っ、」
「どうして_____」
息を切らせて、木刀を握りしめて、男たちを蹴散らして。
彼は、そこに立っていた。
「どうしてっ、ここにいるんですか……坂田さん!!」