第4章 それは予防線
「あっ、美味しい」
「気に入ってもらえてよかったです!」
吾輩は人間である。名前は沖田総悟。職業は真選組隊士。今日は美和さんと共に茶屋にて来ているのである。いつも見廻りのサボりがてら、ふらっと寄るくらいのこの店でも、こうして気まずくならないよう役立ってくれた。褒めてやる。
_____と、ズレた思考回路を戻して、今の状況を考える。
紗倉美和は、そもそも護衛対象だ。仲良くなりてェとか、そういうやましい気持ちはないはずだと思っているのに、こうすることで何か期待してしまう自分がいる。
でも、俺がこの人に執着しているのは、この人の裏に姉上を見ているからだ。それがいけないと分かっていても、彼女と距離を縮めるのを止めようとしない自分に少し呆れる。正直、あんみつの味なんて分かりゃしねえ。
「美和さんは、江戸の生まれなんですかィ?」
とりあえず沈黙を続かせるべきではないと、ふと思いついた質問をする。彼女は暫し考えるように目を伏せて____「違うよ」と答えた。
今の質問のどこに考える要素があったのだろう。そう疑問に思いながらも話を続ける。
「へェ、じゃあ何処のお生まれで?」
その瞬間、彼女の表情は固まった。すこし探るように俺のことを見てから、また目を伏せた。俺は自然と目を細めた。
この人は、何かを俺に隠そうとしている。いや、それを隠すべきか、言ってもいいのか、悩んでるといったところだろう。
それは、俺が警察だからか。それとも、ただの”友人の沖田総悟”に話すべきではないと考えているのか。
「私、地球の生まれではないの。天人なんです」
「そりゃァ………」
「私の話はここで終わりにしよう?聞いても面白くないし…そうだ、総悟くんの話を聞かせて」
話を逸らされた。
それは、これ以上自分のことに踏み込むな、という美和さんからのメッセージであったと思う。