第3章 周りの声
藍side
入学してしばらく経ち、高校生活にも慣れ、ちょうどテレビで気象予報士が、梅雨入りがどうとか言い出す季節になってきた頃、俺のクラスでは初めての席替えが行われた。
せっかく出席番号をきっかけに仲良くなった奴らとの別れを惜しみながら、俺はくじを引いた。
小学生のときは、こんなもんやらなかったな…
アメリカの小学校は、学校によっても違うのかもしれないけど、決められたクラスそのものが存在しなかったからなぁ…
とか考えながら、髪と黒板の数字を確認して席を移動させる。
【ギッ】と、鈍い音をほんの一瞬させながら、俺が椅子に座った途端、なんか教室が女子の声で騒がしくなった。
「ようおモテになりますなぁ〜〜」
「なんだそりゃ……。」
冷やかす友人の言葉を適当に流しながら、俺は自分の両隣を確認した。
俺はというと、最後列の窓側から2番目というなんとも惜しい席。
あとひとつで、ベスポジじゃねーか。
とか思ってたら、廊下側の隣に、なんだかちっさくてひょろひょろとした女子が、机と椅子を持ってやってきた。
挨拶しとかねーとな。
「と…」
アレ???
なんだよコイツ…
今あからさまに俺から目線逸らしやがった…?
下、向き過ぎだバカ。
それから俺は、なんだかこのままだと負けた気がして、そいつと目を合わせるのに必死になった。
授業中も、休み時間も、昼休み体育館にバスケしに行くときも、その帰りも、下校の時も、いつでも俺はそいつと目線を合わせようとした。
それなのに、不思議なコトに一度も合わねーッてのは、どういう了見だ、、マジで。
てか、コイツ…仲良い女子といるとき以外は、基本下向いてねーか???
なんだよ…。
なんか、、しつこく付纏わられるのも迷惑だけど、
なんにもしてねぇのに、目線すら合わせてもらえねぇッてのは、友達になりたくないってコトか?
俺は、連日続くそいつとの攻防に勝てる気が段々しなくなってきて、堪らず友人の京介にこのコトを愚痴ったら、、
『それって、その子、お前に惚れてんじゃね…?』
とか、意味不明な言葉を俺は耳にした。