第1章 ぷんすけ
ちなつside
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「ちなつさん…?欲しいヤツって、マジでこのクマなの?」
「そうだよ???」
なんでだろ?
私が取ってとお願いしたクマのぬいぐるみを見て、藍はどこかイヤそうな顔をしてる。
…しかも、取ることそのものっていうより、あきらかに、これを取るのはイヤだなぁ〜って顔。
「なんで?この【ぷんすけ】が欲しいの。」
「……はっ?ぷん…なに?」
あ、バカにしたな、今。
「だからぁ〜、クマのぷんすけ!」
「だからぁ〜、なにその有名なヤツのパクりっぽいネーミング。」
むっ
「どこがパクり?!ぷんすけは赤色だよ!!」
「見りゃわかるよ。それに、パクったんだとしたらこのルックスはねぇーだろ。これじゃ、あの国民的人気は出ねぇよ。」
藍のバカ。
さっきから、私の大好きなぷんすけを笑いモノにして……
「もういいよっ!」
私は「……ハァ…」と、藍が深い溜め息をついたのを見て、思わず、ゲームセンターを飛び出した。
……………
【ぷんすけ】は、まっすぐな性格から、悪いことに遭遇するとすぐに怒ってしまうため、毛の色が、茶色から赤色に変わって、つり目になってしまったという設定で、
その変わったルックスとちょっぴりおちゃめな性格で、いまや一部の女子高生の間で人気沸騰中なのだ。
今日私がゲームセンターに来たいと言ったのも、このゲームセンターで、ぷん友(ぷんすけ好きの友達)のマリちゃんに、【彼氏にぷんすけを取ってもらった】と、聞いたからだ。
「………」
もういいよ…
あんなに深い溜め息つくなんて…
思わずその場にしゃがみ込んだそのときだった。
「そんなところで立ち止まってっと、邪魔になるぞ?」
その声に振り向くと…
「ぷんすけっ!!!」
視界いっぱいに飛び込んできたのは、真っ赤な毛色につり目の、私が欲しがった、まごう事なく、あの、ぷんすけ……。
目線を上げると、藍が私の顔に向かってぷんすけを突き出していた。
「……なんで?」
…………
「ちなつが欲しがってたからに決まってんだろ?
……他に理由なんか要らねぇよ。」
「……っ、藍、ありがとうっ!!」