第2章 2
ーーー先輩?
パンデミックが起きて少し落ち着いた頃、渚は思い出の音楽室へ来ていた。
バリケードを作るため、安全を確保しに、まだウロついているゾンビ達を掃除していた時のこと。
シャベルを片手に音楽室に入れば、そこには見慣れた後ろ姿。
『……先輩?』
同じ吹奏楽の部員であり、渚が入部するきっかけとなった憧れの先輩。
しかし渚は素直に喜べなかった。
もう手遅れだった。何もかも。
餌を見つけてよたよたと足を引きずりながら、こちらへ向かってくる彼女は自分の知っている先輩ではなかった。
『……せ、せんぱい……?』
どうして? なんで? 何故?
嫌だ、来ないで来ないで来ないで。殺したくないんだ。だって先輩はいつでも優しいし、みんなのリーダー的存在でーーー
『うわああああ!!』
自分へと手を伸ばした彼女だった化け物を、渚は気がついたら化け物の頭目掛けてシャベルを振り上げていた。
腐った死体は崩れ落ち、床へと突っ伏した。彼女の生暖かい返り血を浴びながらも、渚は一心不乱に倒れた彼女へとシャベルを振り下ろした。
『渚!?』
彼の絶叫を聞きつけやって来た茅野とカルマが見た光景は、原型を留めていない肉の塊と化した彼女の前にへたりと座り込んでいる渚の姿。