第1章 1
世界が滅びるのはこんなにも造作もないことなのかと正直思った。
本当にあっという間だったんだ。きっと三分もかからなかった。この椚ヶ丘中学校が地獄絵図になったのは。
「渚くん、何見てんの?」
「校庭。誰か部活やってないかなって」
屋上から校庭を見下ろしている渚にゆっくり近づくカルマ。
彼の隣に立つと同じように校庭を見下す。
そこにはゆらゆら揺れる数人の人影。
しかし、部活をやっているようには見えない。というより、挙動不振で足を引きずっている者もいれば、服がはだけて片胸が何かに引きちぎられたみたいになくなっている者や顔が半分潰れている者など、とてもではないが生きている人間には見えない。
「野球部……休みなのかな。いつも杉野が走り回ってるのに」
「……そうかもね。茅野ちゃんが捜してたよ。もう行こう、渚くん」
彼の腕を掴んで少々強引に屋上を後にした。もう見ていられない、こんな友人の姿なんて。
どうしてこうなったかなんて、誰にもわからない。
ただ間違いなく、醒めない悪夢の中を彷徨っているのは確かだ。
遡ること半年前。
渚達がまだ中学二年の頃。
放課後、同じクラスの園芸部の女子が磯貝に手伝いを頼み、どうせならみんなで楽しくやろうということで、調和を重んじる彼が暇そうにしていた渚、カルマ、茅野を引き連れて園芸部が活動している屋上へとやって来た。
カルマがだるそうに文句言っていたが、磯貝が笑顔で水がたくさん入った大きなジョウロを手渡して、有無を言わさない笑顔で水やりよろしくと言い放った。
吹奏楽部もテニス部も珍しく休みだったので、渚と磯貝は余った体力を園芸部に使うことにした。
今思えば休みの少ないテニス部と吹奏楽部がこの日に限って何故休みだったのか、疑う余地はもうない。
「きゃああああぁぁぁ!!!!」
耳をつんざく金切り声が辺り一面に響いた。
突然の悲鳴に身体が硬直していたが、茅野が何かに気づき、校庭を指差した。
何か暴動のようなものが起きていることが理解できたが、まだ現実味がわからない。
四人の中で一番最初に動き出したのは磯貝だった。
彼は屋上を去ろうとしていたので、渚が慌てて止めた。