第2章 紙とペン
火神side
……というやり取りを、完全放置されていた俺はずっと見ていた。
こっちも女の入部届をチラ見して、名前とクラスは既に把握済みである。
カントクという女が読んでいた手紙の内容は全然わからなかったが、二人の会話の様子を見ていればなんとなく察しはつく。
は声を出す事が出来ないと。
「なあ、お前……」
「!!」
(な、なんだろういきなり……)
「本当に喋れねぇのか?」
「っ……」
(……)
なのにデリカシーのない俺はこんな事を聞いてしまう。
傷付けるつもりは全くないのに、はしっかりと心にダメージを受けてしまった様子。
だから俺はカントクに怒鳴られ……なんだか気まずい雰囲気になってしまったから、自分は先にこの場から離れる事にした。
「……ちょっと聞いてみただけだろ」
ただでさえ日本のバスケに期待していない俺。
それに加えて話せないマネージャー(仮)
この先どう過ごしていけばいいかちっともわからなくなった。
きっとバスケをすればと関わる機会があるだろう。しかも同じクラスだ。
まどろっこしい事が嫌いな俺にとったら、考えるだけでもう面倒。
(おっ。だったらなるべく関わらなきゃいいじゃねぇか)
シカトまではいかないが、出来るだけ対面しないように……二人きりになんて以ての外だ。
会話にもどかしさを感じるのも嫌だし、なにより俺は……女が大の苦手。
みたいな見た目パーフェクトな奴だと余計に。
実は……初めて見た時にの事を可愛いと思った。
こう思ってしまうと、俺は自然と距離を置いてしまう。
バレたくないんだ。
自分が女に対して結構ピュアだって事を。
第1章◆紙とペン【終】