第5章 「日本一にします」
火神side
「!!」
(おはよう、火神くん)
「っ!……はよ」
火曜日。
家が近いせいで朝バッタリ会ってしまった俺と。
ちょっとした言葉なら、自分でもなんとなく理解できるようになった。
ってもの様子も参考にしないと、まだ黒子のようにはいかない。
(ねぇ火神くん)
「なんだよ」
【今日から正式な部員だね】
「ああ。早くなんでもいいからやりてぇー!」
(ふふっ)
もし彼女が出来たら……こんな風に朝一緒に登校したりするんだろうか。
この可愛い笑顔を見て、幸せだなって思ったりするんだろうか。
いや、今俺達は付き合っていない。
なのに俺は普通に〝幸せだな〟と思ってしまった。
……にバレないよう、影で熱くなった顔を冷やさねば。
「??」
(火神くん)
「なっ!なんだっつの!」
(ほら……なんか騒がしいよ)
そっぽ向いていたからか、教室に着いても騒ぎに気付かなかった俺。
クラスの奴らが窓の外を指差しながら話しているのを見て、俺とは顔を見合わせた後近寄ってみた。
するとそこには、直ぐに黒子の仕業だとわかるような巨大文字が書かれていたのである。
〝日本一にします。〟
昨日屋上から宣言できなかった黒子。
その代わりにと、朝1人で校庭に書いたんだろう。
(ふふふっ!)
「やるじゃねぇか黒子」
(よし……!火神くん!)
「ん?」
【今日から頑張ろうね!】
この巨大文字を、一体誰が書いたのか名前がなかった為わからず……誠凛の七不思議として処理されてしまった事は……まあ置いといて。
今のの一言は……例え文字でも、俺を更に奮い立たせる程の力を持っていて改めて気合いが入った。
「やってやるぜ!」
(うんっ!)
そしてそのバスケ生活を支えてくれる存在が、今目の前で自分に微笑んでくれている。
こいつが居てくれたら……どんなに過酷な練習でも頑張れるような気がした。
だから俺は言う。
照れ臭いとかもうどうでもいい。
「一緒に日本一になろうぜ!!」
「!!」
(名前……ふふっ、うん!)
第4章◆「日本一にします」【終】