第3章 黒子は僕です。
(じゃあ私こっちだから……)
話が終わって、途中まで3人で帰ってたけど火神くんの家を知らない私。
テツヤくんとは方向が違うから、私は2人に手を振って分かれ道を進もうとした。
すると……
「送りますよ」
(えっ……い、いいよ悪いから……)
テツヤくんが私を家まで送ってくれると言う。
ここからまだ距離があるし、甘えてしまってはテツヤくんの帰りが遅くなってしまう。
だから私は何度も胸の前で手を振って断った。
そしたら……
「……俺こっちなんだけど」
(え……?)
火神くんが私と同じ方向を指差した。
ちょっとだけ彼の事を知れた気がして……私の顔は自然と笑顔になる。
けど火神くんとテツヤくんの表情は私とは違った。
火神くんは怒ってるんだか照れてるんだかよく分からない顔をしていて、テツヤくんは無表情だけど……本当は少し不貞腐れている。
それが全く理解出来なくて、どうしていいかわからない。
【2人とも怒ってる……?】
「怒ってねぇよ!」
「……僕もです」
いやこれは明らかに怒ってる。
どうして?
もうサッパリで困った。
でも方向が同じなら、火神くんと一緒に帰った方がいいんじゃないかとは思う。
だからそう言っただけなのに……
「……わかりました。ではまた明日」
テツヤくんはムスッとしたままこの場を離れてしまった。
そんなつもりはなかったけど、なんだか悪い事を言ってしまったなと申し訳なくなる。
「おい」
(な、何……?)
「置いてくぞ」
(え……あ、うん……)
私が何かしたから怒っていたんだろうし、テツヤくんには明日謝ろう。
メールでもいいけど、やはりこういうのは直接謝りたい。
そう思いながら、私は少し離れた火神くんを追いかけた。
これが彼と並んで歩く初めての帰り道。
自分の家に着くまでずっと無言だったけど……不思議と落ち着けた。
第2章◆黒子は僕です。【終】