第7章 ここにいる理由①(黒尾&孤爪)
「おまたせー。遅くなっちゃってごめんね。」
「こんばんはー。」
「よろしくお願いしまーす。」
女性陣が到着して、個室は一気に華やかになる。
皆20代後半といったところだろうか。
「じゃあ、飲み物くるまで暇なので、名刺交換でもしますか。」
誰かがそう提案すると、女性たちが喜びの声を上げる。
「わあ、M商事の名刺見てみたい!」
「明日会社で自慢しちゃお。」
この反応には、男性たちはもうすっかり慣れているのだが、
やはり気分は良い。
女性もそれは承知の上なのだろうが。
「早川です。よろしくお願いします。」
目の前の女性が、そう言って名刺を差し出した。
黒尾はそこに明記された「早川凪沙」の文字にくぎ付けになる。
彼女も、黒尾の名刺を見つめて固まっている。
「ナギ……?」
「クロ……?」
二人はテーブルをはさんで数秒見つめあった。
「うっそ、クロ!?え、ほんとに?」
緊張していた営業スマイルから一気に素の表情を見せる早川。
「驚いたな。全然分かんなかった。」
黒尾は目を丸くして改めて彼女を見つめる。
「え、なに?二人知り合いだった?」
二人の様子に他のメンバーが注目する。
「あー、俺とこいつ、中学の途中まで近所に住んでた幼馴染なんです。」
「でもその後は疎遠になってて、十数年ぶり?です。」
二人はそう説明してから、もう一度顔を見合わせて笑い出した。
「やだー、クロおっきくなってる。なんか変。」
「そりゃ中学の時よりは大きくなるだろ。
お前はそんな背伸びなかったんだな。」
ひとしきり再会を喜んだところで、飲み物が運ばれてきて、合コンが始まった。