第21章 affettuoso(孤爪 研磨)
おれが一人でゲームをしていたら、どこからか猫がやってきた。
フワフワで白いそいつは、おれに体を擦りつけて甘えた声を出す。
無視していたら、今度は膝に上ってきて我が物顔で座り込む。
ゲームはしにくいけど別に嫌じゃないな、と思ったところでおれは気付く。
これは、夢だ。
ぼんやりと焦点の合わない目で部屋を見渡すと、カーテンからうっすらと光が差し込んでいる。
(なんじ……?)
枕元に置いてあったスマホに手を伸ばす。5時半。もう一度眠ろうとして、ベッドの中に自分以外の何かがあることに一瞬ドキリとする。
そして、ああ、だからあんな夢を見たんだな。と納得する。
「凪沙。」
名前を呼ばれた彼女は、ゆるゆるに気の抜けた寝顔をおれの身体に擦り付ける。
頭まで布団を被って、こんな風に人の身体に顔を押し付けて、苦しくないのかなっていつもながら不思議に思う。
彼女は時々こうして俺の寝床にもぐりこむ。
「どうしたの。」
柔らかな猫のような髪を撫でて、小さな声で問いかける。
「こわい夢みた……。」
この前は、寒いからという理由だった。
ぎゅうっと俺にしがみつく彼女の背中を撫でながら、おれは再び眠りに落ちた。