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【ハイキュー】短編中編つめあわせ

第3章 東峰、部活やめるってよ。(菅原 孝支)


季節は、もうすぐ春。

バレンタインも学年末テストも終わって、春休みを待つのみ。

3年生はとっくに卒業していき、私も吹奏楽部副部長として
慣れないながら精一杯高校生活を送っていた。


そんなとき、少しだけ気になる噂を耳にした。


「男子バレー部のエースが突然部活をやめるらしい。」

部長の藍ちゃんが指揮棒をいじりながら教えてくれた。

「ふーん。誰だっけ?バレー部のエースって。」

私は譜面から顔を上げて質問する。

合奏前の音楽室はあちこちで楽器の音が響いている。

「東峰君って知らない?大きくて強面の。
私クラス同じなんだよね。」

「あー、ちょっと分かるかも。そりゃまたどうして。
エースなんてかっこいいじゃん。
やめちゃうなんてもったいない。」

「理由は良くわからないけど。
でもそのおかげで、最近うちのクラスに澤村君と菅原君がよく来るんだよね。
部活に連れ戻したいみたいでさ。」

藍ちゃんのその言葉に私は胸が熱くなる。

「うわ、なにそれめっちゃ羨ましい。」

「かっこいいよね、二人とも。」

そう言って私たちは顔を見合わせて笑った。

「ナギ先輩、チューナーまた調子悪いんですけど、いいですか?」

後輩がやってきて、遠慮がちに話しかける。

「あ、うん。いいよ。じゃあbの音出して。せーの……」

彼女はクラリネットを構えて音を出す。

私は周りの雑音からその音だけに集中して耳を澄ます。

「少し低いかな。もう一回、せーの……。」

そうして何度か音を調整していく。

「うん、OK。」

「ありがとうございました。」

私から合格をもらって、彼女はお礼を言って自分の席に戻って行った。

「さすが、絶対音感。」

黙って見ていた藍ちゃんが感心したように言う。

「普段は何の役にも立たないけどね。」

私は苦笑して自分の楽器の準備を始めた。
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