第17章 てのひらの恋(澤村 大地)
翌朝、俺が先に目を覚ましてシャワーを浴びて出たところで、早川さんは目を覚ました。
「ああああ……やっちゃった?やっちゃったの?いやでもブラジャーしてるし。セーフかな?ねえ、澤村君は覚えてる?」
どうやら記憶はないらしい。
「大丈夫。セーフですよ。」
俺がそう答えてあげると、彼女はほっと胸をなでおろした。
その姿はビッチとは程遠い。ただ酒癖が悪いだけなのか。
荷物をまとめて帰ろうとする彼女に、俺は声をかける。
「早川さん今日講義午後からですよね。朝ごはん作りますから。食べて行ってください。」
「……いいの?」
口調は遠慮がちだが、その表情は食べる気満々なのがおかしくて俺は笑いを堪える。
「はい。その間にシャワー浴びて来てください。」
バスタオルを渡すと、彼女はぱあっと笑顔になる。
「ありがとー。お言葉に甘えさせてもらうね。」
素直なのか、図々しいのか、あるいは両方なのか……。
浴室から水音が聞こえてきてから、俺は朝食を作り始める。
卵をわりながら、考える。
シャワーを浴びて出てきた彼女に、なんて言って俺の思いを伝えようか……。
とりあえず、俺以外の男と酒を飲むのは禁止にしよう。
「てのひらの恋」Fin.