第15章 そんなふたり(岩泉 一)
休日の昼、岩泉が部屋の片付けでもするか、と思っていたところで、携帯が鳴った。
「もしもし、岩ちゃん!?」
電話の向こうの及川は随分と慌てた様子だった。
「どうした。何かあったのか。」
またどうせくだらないことで大げさに騒いでいるのだろう、
と岩泉は話半分で返事をする。
「凪沙ちゃんが大変なんだ!とにかくすぐ病院に来て!」
詳しい説明もせずに及川はそれだけ言って電話を切ってしまった。
(な、なんだ……!?)
意味が分からなかった。
岩泉の彼女の早川凪沙は確かに先週から入院している。
でもそれは虫垂炎、いわゆる盲腸というやつで、手術も無事に終わって明日には退院すると聞いていた。
昨日も見舞いに行ったが元気な様子だった。
(とにかく、行ってみるしかねえか。)
彼女に何かあったのは確かだろう。岩泉は急いで仕度をして家を出た。