第14章 魔法をあげる(西谷 夕)
「……あーあ、とっておきの必殺技を教えてあげようと思ったんだけどなあ。
もうバレーやめちゃう凪沙には必要ないか……。残念だな。」
西谷が意味ありげにそう呟くと、彼女は少しだけ顔を上げた。
「……必殺技?」
「おう、どうだ。教えてほしいか!?」
「……うん。私にもできる?」
「できるできる!」
西谷は得意げに早川の耳元で何かをささやいた。
「……な?簡単だろ!?」
自信満々の西谷にたいして、早川は不安そうな表情を浮かべる。
「それって、夕がいつもやってる……。ていうか、ほんとにやるの?」
「騙されたと思ってやってみろって!」
うーん、と少し悩んでから、早川が渋々と頷いた。
「……分かった。」
「よし、じゃあいくぞ!」
西谷は彼女から数メートル離れて、ボールを打ち込む。
そのボールは早川の少し手前めがけてまっすぐに落ちていく。
「ロ、ローリングサンダァーー!」
早川は恥ずかしそうにそう叫んで、ぐるんと前転を決めてレシーブの姿勢を取る。
トン!
早川の腕に当たったボールはキレイに上がり、西谷の元へ戻って行った。
「上出来!!」
西谷がボールをキャッチしてグっと親指を立てた