第12章 裏路地のうさぎ(福永 招平)
日曜の夕方、渋谷のハチ公前広場に立つ。すごい人だ。
俺はスマホを握り締めて、彼女が送ってきた服装を確認する。
それと同じ服装を探す。
彼女もきっと俺を探しているはずだ。俺は部活帰りだから制服で行くと言ってあった。
昨日はあまり寝られなかった、
今日の練習はレシーブがいつもより上がらなくて夜久さんに少し怒られた。
「福永らしくねえな」って黒尾さんには心配された。
申し訳なかったな。
明日からはちゃんとしよう。
「しょーへー?」
背後から呼ばれて、俺はドキリとする。
低すぎず、高すぎず。でも少し不安そうな声。
俺の胸の中にも彼女の不安がうつってきた。
きっと俺はあんまりしゃべれない。
でも、大丈夫。
俺と彼女は、仲良くなれる。
そう信じて、
ゆっくりと振り向いた……。
「裏路地のうさぎ」Fin.