第12章 裏路地のうさぎ(福永 招平)
諦めかけた時……
ピロン!
俺は震える手でカーソルを動かす。
「アジカンのライブ、今年はもうSOLD OUTだったよ。
来年の1月のなら……来週から一般販売始まるけど。」
びっくりした。てっきり拒否られたのかと思った。
調べてくれてたのか……。
「じゃあ、それ行こう。俺チケットとるよ。」
「あのさ、しょーへー。」
「なに?」
「会ったらしょーへーをがっかりさせちゃうかもしれない。」
「がっかり?」
「だって、私多分しょーへーの思っているような女の子じゃないよ。」
その時初めて彼女は女の子らしい言葉を送ってきた。
「俺だって、ナギの思っているような長身イケメンじゃないよ。」
冗談ぽく言ったけど、俺だってがっかりさせるかもしれないと思うと不安だ。
でも、俺はナギに会ってみたかった。
「田舎から出てきたばっかでダサいし。」
「いいじゃん。俺だって別にオシャレじゃないよ。」
「なまってるし。」
「全然気にしないよ。」
「音楽オタクだし。」
「それはお互い様。」
そこで少し間が開いた。
ドキドキする。ナギはどう思ってるだろ。
迷惑かな。しつこいって思われたかな。
ピロン!
「まずは渋谷のタワレコ行ってみたい。そのときライブの相談しよ。」
俺はにやける顔を枕に押し付けた。
やった!
「いいよ。行こう。」
そう送ってから、俺はアジカンの一番お気に入りのライブ動画のURLを貼り付けた。