第12章 裏路地のうさぎ(福永 招平)
「ナギ、東京には慣れた?」
「うーん、微妙。学校でもあんまり友達いない。」
「そうなんだ。意外。」
「だって、方言とかなまりとか、恥ずかしくて話せない。」
「ああ、そっか。ネットだと分かんないけど、ナギは九州に住んでたんだもんね。」
ノートパソコンを持って、ベッドに移動する。
寝転がって快適な体勢を探しながら画面を見つめる。
「うん。しょーへーはずっと東京?」
動画が終わって、カチカチというキーボードを叩く音だけが響く。
「うん。そうだよ。」
「いいなあ。都会人だね。バレー部ってことは長身でイケメンかな。
友達と原宿行ってナンパとかしてそう。」
どんなイメージ持たれてるんだ俺。カチカチ……。
次の動画を再生する。あ、これ聞いたことあるやつかも。
「そんなのしたことないよ俺。
ていうか俺もあんまりしゃべるタイプじゃないから。」
「へー、そうなんだ。意外。」
「うん、今日も友達に『もっとしゃべれ』って言われた。」
「まじか。」
顔も知らないはずなのに、
なぜだか彼女が驚きながら笑っているのを想像してしまった。