第5章 漂う紫煙
「口を開いて何を言うかと思えば『どうして』だと? わざわざ助けてやったのだから、礼くらい言うのが礼儀だと思うのだが?」
「あっ……すみません、ありがとうございました」
「フン……」
ペコリと頭を下げると、風間さんは流れるような動きで刀を鞘に戻した。
「あの……どうしてこんなところに風間さんが……?」
「薩摩の奴等が京に来るのに着いてきただけだ」
「そうですか……」
私の質問に答えた後、風間さんは背を向け歩き出した。無言でそれを見送っていると、数歩先で振り返り、じっとこちらを見てきた。
「? あの……」
「屯所まで送ってやる」
「え!?」
一緒に行ったら拐われてしまうかも……
今まで幾度となく風間さんに拐われた記憶がよみがえり、緊張で体が固くなった。
「勘違いするな」
そんな私を見て、何を考えているのか察したのだろう。心外だとばかりに眉間にシワを作った。
「お前を連れていくのは、お前を囲っている目障りな新選組を蹴散らしてからだ。……グズグズしているのなら、俺は勝手に行くぞ」
今度こそ歩き始めた風間さん。
私は慌てて後を追い、風間さんの三歩後ろを歩いた。