第5章 漂う紫煙
どうすることも出来なくて、一歩後退りをする。背中に固くて冷たい感触が当たり、これ以上下がれない事を知らせる。
「へへへ……」
伸ばされた浪士の手に、私は絶望を見た。
もう駄目だ……
ギュッと目をつぶる。すると――
「ぎゃー!!」
細い路地裏に大きな悲鳴がこだました。
驚いて目を開けるとそこには――
「…………」
無言で刀を抜いて立っている、長身の人の姿があった。
「何だ、てめぇ……おい、やるぞ!!」
先程腕を切られた人を除く四人が刀を抜き、襲いかかる。しかし……
「ぐわっ!!」
「ぎゃあー!」
その人は、あっという間に四人を切り倒してしまった。
相変わらず、凄い剣術――
ぽかーんと見ていると、クルリとその人が振り返り、呆れたような視線を投げた。
「風間さん……どうして……?」
口からこぼれた呟きがが、地面に落ちて消えた。