第4章 広い背中
「ぐわっ!!」
私が切られたのを見た山崎さんが、黒い刃物を浪士に投げつけ、怪我をしていない方の手を握って走り出した。
「待て!! ……うわっ!?」
時々振り返っては、刃物を投げて浪士との距離を空けていく。そうして、しばらく走ると浪士は追いかけて来なくなった。
「はぁ……はぁ……こ、ここまで来れば……大丈夫ですね」
「……が」
「? 今、何か……っ!!」
息を整えていると、山崎さんの小さな声が聞こえた。聞き直してみようとした瞬間、両肩を掴まれた……とても強い力で。
「何が大丈夫だ!! 君は怪我をしたじゃないか!!」
「そ、それは……山崎さんが怪我をしてしまうと思った途端、体が勝手に動いて……それに、私は……鬼……ですから。これくらいの怪我、すぐに治ります」
スッと切られたところを見せると、すでに傷はふさがり、薄い後が残るだけになっていた。
「はぁ……」
呆れたようにため息を吐いて、「それでも」と山崎さんは続けた。